脱ペーパードライバーの歩み 〜 事故発生 中編

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一生懸命に気持ちを落ち着かせて、ダッシュボードに入れておいた保険のメモ書きを見て事故発生時用の電話窓口に電話をしました。

記憶が曖昧になってしまっていますが、確か、最初に私自身の身が無事か確認をされました。そして、安全な場所にいるかも聞かれたと思います。もっともです。瀕死の状態で道路のど真ん中で電話かけている可能性だってあるんですよね。幸い何のダメージもありませんし、車は道路の端にいて他の通行の妨げにもなっていません。

私の氏名や保険契約番号的なものと、事故発生時刻と場所を聞かれました。時間は時計を見て大体わかりましたが、場所はどこの街なのか全然分からず、多分どこら辺りだと思うと答えました。

今は休日なので休み明けに担当者から連絡が入るということを伝えられました。

そして、警察には連絡したかを確認されました。まだしていませんでしたが、本来は事故発生後には、まず警察に連絡をすべきでした。連絡をした方がいいですよ、と言われ保険窓口との電話を終えました。

 

ひと呼吸して110番通報しました。すると、その地域を管轄する警察署につながったようです。

「事件ですか?事故ですか?」と聞かれ、自動車事故である事を伝えました。保険窓口の方と同様に私の無事を確認されると同時に車が動くか道路の安全な所にあるかを確認されました。また、場所を確認されたのですが、分かりません…そりゃ聞かれるに決まってるよな、電話する前に確認しとけよって話だよな。

車内から住所表示や信号機の地名表示が見えないか見回したところ、運良く信号機に書いてある地名が見えたので、それを伝えました。道のどっち方面を向いてるのか聞かれましたが、それも全然分からず…

 

あらかじめ自分で分かる限りの状況を確認してから電話をすべきでした。当たり前過ぎることですが、気が動転しているとそういった正常な手順や判断ができないものです。こういった時に、その人間の真価が現れるのかもしれません。つまり私は使えないアホってことじゃん!ちくしょー!次に生かすしかないのであります。次はないように頑張るけど。

 

警察官がそちらに向かいます。とのことで、しばらく待ちました。しばらくすると警察署から電話がかかってきて「そちらに行った警察官から、あなたがいないって連絡が入ったんだけど今どこにいるのか?」とのこと。いや、移動しないでじっとしてますが…

おそらく、伝えた信号機の交差点の違う側にいるのかもしれないと伝え、車を降りて交差点へ走って行ってみた所、案の定お巡りさんが反対車線にいました。

 

警察官の方を現場に案内し、事故の状況を見てもらいました。

あなたが起こしたのは自損事故ではないよ、縁石であったり柵が痛んだのであれば、その持ち主がいるわけで、その持ち主に対して損害を与えたことになるので、相手のある事故なんだよ。ということを念を押して説明されました。

「道路はどんどん痛んでいくものだし、これまでに積もった傷などがあるから、ちょっとした事故だったり、小石を弾いて道路が痛んだ程度では、どの損傷がその事故でついたものかっていうのを判別するのは難しい事で、たいていは細かく追求することはない。でも、あなたの場合は柵が壊れているから、車がここにぶつかって壊れたのは状況から明らかなんだから自損事故ではないです。全くの自損事故っていうのは稀で、自分のタイヤが小石を弾いて、自分の車に当たって壊れたとか、そういうケースくらい。でも、そんなことは滅多にないんですよ。」ということでした。

ただただ「はい。」と繰り返し相づちを打つしか有りません。多分私は顔面蒼白で全身がこわばって見えたと思います。

 

「ここは県道か、市道か分からないなあ。多分、市だな。被害を受けたのは市ということになるから、そこに連絡して、被害者側がどういう判断をするかだね。この程度の痛みだったら見逃してくれることもあるかもしれないけど、それは何とも言えないね。私がこれからあなたの個人情報を確認させてもらって、市の方へそれを渡しても良いですか?そうすると市の土木課とかそういう所に連絡が行って、おそらくあなたに連絡が入ります。それとも、あなた自身で市へ連絡をして、自分でやりとりをしますか?」

選択肢を与えられた真意を図りかねました。公道で事故を起こしてしまったら警察に連絡を入れて現場検証してもらって、事故として記録するのが当然だと思っていましたし、おそらく、そうしないと柵を弁償する際に自動車保険金は出してもらえないのではないかと思うからです。しかも、自分で直接に市へ連絡をすれば、どのみち自分の個人情報は伝える事になるでしょうし。

もしかして、暗に事故はなかったことにしてもいいよ、という選択肢を与えてくれているのではないかと感じました。そこで、その真意を探ろうとしましたが、さすがにハッキリとは言えないようで、再度「ですからもう一度確認しますが、私があなたの個人情報を確認させてもらって書類を市に渡すと、〜(略)〜なります。それでもいいですか?っていうことを聞いているんです。」と繰り返されただけでした。

 

う〜ん。確かに柵は痛んでいるけど、完璧ぶっ壊れて酷いって感じでもないし(自分に都合の良い解釈)、こういう状態になっている場所はよく見かけるし(よく見かける事と自分がこの柵を壊したこととは何の関係も無いので意味の無い考え)、きっと警察官の方からすれば、スルーして良いレベルと思っているんだろうな(完璧に勝手な解釈)。

でも、ここで事故として正式な記録を上げてもらわなかった場合に、実は車の内部がダメージを受けていて、高額な修理費をかけないと直りませんっていうことになったとしたら、保険金はおりないだおうな。もう保険会社には電話しちゃってるし、警察に連絡しろって言われたのにしなかったってことになったら、まずそうな気がする。

と、もはや朦朧としてきている思考でどうにか判断をして、警察の方に処理をしていただきたいと伝えました。

 

免許証と車検証を出すように言われ渡しました。警察官が書類に必要事項を転記した後返されました。そして事故発生日時、場所の確認。場所についてはやはり、番地を示す板が見当たらず、警察官の方が探しに行きました。その間にようやく自分でもスマホのGPSで現在地を確認して正確な番地が分かりました。保険会社に伝えた場所と都道府県からして違いました。あちゃー。

 

そんなこんなで、最後に警察署名と警察官の名前を告げられました。警察官の名前を復唱してメモをとったら「私は書類を書いて届けるだけで、担当でも何でもないですから、処理をするのは事故捜査係ですからね」と念を押して言われました。名前を言われるとなんか面倒なことでもあるんでしょうかね?

そして警察官の方は去って行きました。事故発生から一時間程が過ぎていました。

 

左前フェンダーがへこんだ車とポールがとれかかった柵と私が取り残され、何だか妙な心地でした。あれ?このままこの事故った車で帰っていいのかな。という不思議な感覚でした。

 

車に乗り込んで今度は車載カーナビを使って帰ろうと思いました。小刻みに震える手でどうにかカーナビで自宅を目的地に設定して案内を開始させました。

 

さあ発進するかと思ってキーを回したら、ギュギュブロロローンとエンジンがかかってもすぐにストールしてしまいます。あれ?血の気が引きました。もう2回やってもだめです。

もしややっぱ壊れてしまったか?うっそー買ったばっかなのに!レッカーか?保険会社のレッカーサービスに電話をしかけました。が、そこでハッと何か虫の知らせ的なものを感じてすぐに電話を止めました。

もう一度、頭をリセットして発進の手順を取り直しました。あ、ハンドブレーキかけたままだった。そういうことか。頼む、エンジンかかってくれ!祈りつつキーを回したら今度は大丈夫でした。レッカー呼ばなくて良かったー。

右ウインカーを出して発進、事故を起こしたばかりで、ハンドルを握る手はガッチガチでしたが、車載カーナビのお陰で驚くほどスムーズに自宅まで戻って来ました。

最初からゆっくり車載カーナビの使い方を調べてこうしていれば、ガソリン缶を1km以上運んで歩く事も、事故を起こす事も多分なかったんだよな。ほんとバカだ。

 

家に着いて、事故を起こした事自体のショックと買ったばかりの車が傷ついてしまったショックとこれから未知の事後処理をしなくてはならない気の重さと、このことを奥さんに伝えなくてはならない情けなさとで、全身がワナワナして落ち着きませんでした。

 

奥さんには何故か笑われました。それがせめてもの救いでした。

また運転するのが凄く怖かったですが、これで車から疎遠になってしまうといけないと思い。次の日にすぐ、ハンドルを握りました。怖かったー。

こんな、奴が道路を走っているという事が周りの人にとっては怖いですよね...

精神的に大きなダメージは一週間くらい日常生活にまで尾をひきました。しんどかった。

 

そして、事後処理へと続きます。

 

続く:脱ペーパードライバーの歩み 〜 事故発生 後編